
なぜ家を買うと「仲介手数料」がかかる? 一般の商品販売と不動産市場の違い
なぜ家を買うと「仲介手数料」がかかる?
一般の商品販売と不動産市場の違い
新築戸建てを購入するとき、物件価格とは別に 「仲介手数料」 が必要になることがあります。
不動産業界では当たり前のように使われている言葉ですが、 初めて住宅を購入する方からすると、 少し不思議な費用ではないでしょうか。
車を買うときも、家電を買うときも、洋服を買うときも、 商品代金とは別に「仲介手数料」を支払うことは、それほど多くありません。
では、なぜ不動産では「仲介手数料」という仕組みがあるのでしょうか。
その理由を理解するには、 一般的な商品と不動産では「商品が消費者に届くまでの仕組み」が違う ことを知る必要があります。
一般的な商品は「メーカー → 販売店 → 消費者」

車や家電、洋服などを考えてみましょう。
一般的には、販売店がメーカーなどから商品を仕入れ、 それを消費者に販売します。たとえば家電量販店に並んでいるテレビなら、 販売店が商品を仕入れ、仕入価格と販売価格の差などから利益を得ます。
消費者は販売店にテレビの代金を支払いますが、 通常はそれとは別に 「テレビを紹介してもらった仲介手数料」 を支払うわけではありません。
販売店の利益を含めた流通の仕組みの中で、 商品が販売されているからです。
大量生産できる商品は「販売店が仕入れる」が成立しやすい

この販売方法が成立しやすい理由のひとつが、
「大量生産」です。
● 同じ車種を何千台、何万台と生産する
● 同じテレビを何万台と生産する
● 同じ洋服を何万着と生産する
メーカーは大量に商品を作り、それを複数の販売店へ卸すことができます。販売店側は商品を仕入れて在庫リスクを負いますが、 その代わり販売したときの利益を得られます。
メーカー側も販売店へ商品を卸すことで、 在庫や販売業務の一部を販売店側へ移すことができます。
大量の商品を繰り返し販売できるため、 1商品あたりの利益だけではなく、 販売数量によって利益を確保する という考え方も成立しやすい市場です。
ところが新築戸建ては大量生産品ではない

新築戸建ては少し事情が違います。
横浜市旭区○○町
土地100㎡・建物95㎡
駅徒歩12分・4LDK
5,000万円
この住宅とまったく同じ商品を1万棟作ることはできません。建物の仕様が同じでも、土地の場所、道路との位置関係、 日当たり、周辺環境などが違います。
つまり不動産は、基本的に 「その場所にしか存在しない商品」 です。さらにテレビや洋服のように、 「横浜店で売れないから東京店へ商品を移そう」 ということもできません。
販売店が新築戸建てを仕入れて販売する方法も考えられる

それなら一般の商品と同じように、 販売会社が建売会社から住宅を仕入れて販売すればいいのではないでしょうか。
もちろん、この方法自体は可能です。販売会社が住宅を買い取れば、 建売会社はその時点で売却できます。
建売会社からすると、完成した住宅を早く現金化でき、 売れ残りのリスクを販売会社側へ移せるメリットがあります。
しかし販売会社は、 数千万円の商品を仕入れて在庫リスクを負う ことになります。売れなかった場合の値下がりや資金負担を考えれば、 販売会社としては、そのリスクに見合った仕入価格を求めることになります。
建売会社からすると、 販売会社へ大きな利益を残して卸すのか、 それとも自社で住宅を所有したまま最終的な購入者へ販売するのか、 という違いが出てきます。
そこで不動産では「商品を仕入れずに販売する」仲介が発達
新築戸建てでは、 「仲介」 という仕組みが広く利用されています。
ここが一般の商品販売との大きな違いです。
仲介会社は、その新築戸建てを仕入れているわけではありません。
住宅の所有者は建売会社のままです。仲介会社は購入希望者を探し、物件を紹介し、 現地案内や契約手続きなどを行います。
そして売買が成立すると、 住宅そのものは建売会社から購入者へ直接売却されます。
仲介会社は商品を所有するのではなく、 売主と買主の間に入り、取引を成立させる役割を担っているのです。
1つの新築戸建てを複数の不動産会社が紹介できる
この仕組みは、不動産という商品と非常に相性が良いと考えられます。一般の商品なら、 「同じテレビをA店にもB店にもC店にも卸す」 ことができます。
同じ商品を大量生産できるからです。しかし、新築戸建ては基本的に1棟しかありません。
その1棟をA不動産会社が買い取ってしまえば、 同じ住宅をB不動産会社やC不動産会社へ同時に卸すことはできません。
ところが仲介なら違います。
建売会社が住宅を所有したまま
A不動産会社も紹介できる
B不動産会社も紹介できる
C不動産会社も紹介できる
多くの購入希望者へ販売機会を広げられる
建売会社は住宅そのものを各社へ卸すことなく、 多くの不動産会社の販売力を利用できるわけです。
不動産仲介市場は戦後に大きく発展

不動産仲介そのものは戦前から存在していましたが、 現在につながる不動産仲介市場が大きく発展したのは戦後です。
終戦後の日本では深刻な住宅不足が発生し、 住宅や宅地に対する需要が急増しました。それに伴って不動産取引も増え、 売りたい人と買いたい人の間に入る仲介業者も増えていきます。
その一方で、十分な規制が整っていなかったことから 不適切な取引なども問題となり、 1952年(昭和27年)に「宅地建物取引業法」が制定 されました。
国が最初から現在の仲介市場を作ったというより、 先に不動産仲介という商売が存在し、 戦後の住宅需要の拡大によって市場が成長。 その後、法律や制度が整えられていったと考えると分かりやすいでしょう。
だから不動産では「仲介手数料」という報酬がある
ここまで理解すると、 なぜ不動産を購入すると「仲介手数料」が出てくるのかが分かりやすくなります。
一般的な販売店
商品を仕入れる
↓
消費者へ販売する
↓
販売による利益を得る
不動産仲介会社
商品を仕入れない
↓
売主と買主を結びつける
↓
仲介業務に対する報酬を得る
つまり、一般的な販売店と不動産仲介会社では、 利益を得る仕組みそのものが違うのです。
「家を買うときだけ手数料を払うの?」と感じるのは自然なこと
不動産業界で働いていると、 「住宅を購入する=仲介手数料がかかる」 ということを当たり前に感じてしまいます。
しかし、初めて住宅を購入する方の立場から考えてみると、 疑問に感じるのは自然なことです。
「5,000万円の家を買うのに、
なぜ物件価格とは別に
仲介手数料を払うの?」
車や家電、洋服など、多くの商品では 「商品価格+購入者から販売会社への仲介手数料」 という支払い方を経験することが少ないからです。
不動産だけが単純に特別な費用を取っているということではなく、 そもそも一般の商品と不動産では、商品が消費者へ届くまでの市場構造が違います。
一般の商品
メーカー → 販売店 → 消費者
販売店は商品を仕入れて販売する
不動産仲介
売主 → 仲介会社 → 買主
仲介会社は商品を仕入れず、売主と買主を結びつける
この違いを知ると、 普段何気なく聞いている「仲介手数料」という言葉の意味も、 少し分かりやすくなるのではないでしょうか。
